大判例

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仙台高等裁判所 昭和31年(う)398号 判決

判決理由〔抄録〕

(前略)記録によると、原判示事故現場は国道であって、もとより自動車専用の道路ではない。そして原判示込山キヨ子方の木戸口(宅地から国道への通路)は公道ではなく、農家たる同人方のみで使用する通路であるがそういう通路でも、これを通行する人があることはもちろんであるから、国道を通行する自動車の運転者としては、右木戸口附近を進行する際には右木戸口から人の出入することあるべきことを予想して東左側方を注視し必要に応じて警音器を鳴らしてその通行人に警告を与え、何時でも避譲又は停止し得る如く用意しつつ進行する等危害の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があることは条理上当然である。

尤も、右の如き木戸口は市街地でいえば軒をならべている各家の出入口と同様のものであるから、そこから道路に出入する通行人は、道路を進行する自動車の有無に注意すべきことは当然であるが、通行人にこのような注意義務があるからといって自動車運転者の前叙注意義務が軽減されるものでないことはいうまでもない。

(中略)本件において後記の如く被告人は込山方木戸口に接近した際、警音器を鳴らさなかったばかりでなく、込山方木戸口から人の出て来ることを全然念頭に置かず、これに対する注意を払わなかったのであるから、その意味で前叙業務上の注意義務を怠ったことは明らかで………

(中略)キヨ子も前叙の如く自転車のブレーキをかけながら徐行しつつあったものであるから、同人といえどもその余裕さえあれば避譲又は停車の措置に出たであろうこと等を併せ考えると、被告人が急停車の措置をせめて実際とったよりも二―三米手前でとり、かつハンドルの切りかたをもっと十分に(停車位置でスリップ痕が更に二米弱右に寄る程度に)すれば本件事故は十分避け得たであろうことが窺われる。而して記録を精査し、当審における事実取調の結果に徴しても、当時例えば前方から人又は車等が進行して来ていたとか、その他右の如き操縦の自由を妨げるべき状況はなく、かつ当時被告人の自動車のブレーキやハンドルに何等故障がなかったことも明らかである。(実況見分調書参照)果して然らば、本件事故は被告人が自動車の操縦を誤った結果であることは明瞭で、かつそれは前記注意義務を怠り、キヨ子を見付けて驚きあわてた結果と認めるべきことは明らかである。

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